東京高等裁判所 昭和30年(う)524号 判決
被告人 古屋重則
〔抄 録〕
なお当裁判所は刑事訴訟法第三百九十二条第二項に則り職権を以て原判決の法令の適用及び訴訟手続の当否を調査すると、原判決はその主文において被告人を懲役四月に処する旨を言渡すと共に、原審が被告人に対し昭和二十八年十二月十四日窃盗罪について言渡した懲役一年六月に対する五年間の執行猶予を取消す旨の宣告をなし、その理由として被告人は前刑の執行猶予の期間内に更に罪を犯し、懲役の実刑に処せられたから刑法第二十六条第一号により前の執行猶予を取消すと説明している。
しかし刑法第二十六条第一号に「猶予の期間内更に罪を犯し禁錮以上の刑に処せられ、その刑につき執行猶予の言渡なきとき」とは、執行猶予の期間内に犯した罪について言渡された禁錮以上の刑が確定したことをいうのであり、同条により刑の執行猶予の言渡を取消すには、検察官から刑事訴訟法第三百四十九条第一項に基く執行猶予取消の請求がなされたことを要し、裁判所は同条第二項により被告人又はその代理人の意見を聴いて決定を以てなすべきであるに拘らず、執行猶予の期間内に犯した罪について禁錮以上の刑の言渡をすると同時に、その判決で刑事訴訟法第三百四十九条所定の手続を経ずして前の執行猶予を取消す旨の宣告をした原判決は、法令の適用を誤り訴訟手続が法令に違反したものであり、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条第三百七十九条により原判決を破棄する。